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非居住者に対する源泉徴収に関する裁判事例

本事案は,原告が,Aから各不動産を購入する契約を締結し,代金決済と所有権移転登記手続をしたところ,処分行政庁において,Aが所得税法上の非居 住者に該当するから本件売買契約に係る譲渡対価が国内源泉所得に当たり,原告は所得税法212条1項に定める所得税の源泉徴収義務を負っているとして,本 件各処分をしたことに対し,本件各処分を不服としてした異議申立て及び審査請求がいずれも棄却されため提起された裁判です。 この事案について東京地方裁判所で判決がでました。

判決要旨

不動産取引においても,買主が売主の住所・居所,資力その他の事情や属性に強い関心を有するのが通常であり,特に売主の住所・居所が国内にあるか否 かの調査確認については,売買契約書の作成,不動産登記事項証明書の確認,売主からの委任状及び印鑑証明書等の入手又は売主への直接確認等の方法により容 易に行うことができる上,そのような確認ができず,居住者か非居住者かの確認に疑義が存在するのであれば,源泉徴収義務に相当する額の支払を留保するなど の措置を採ることも十分に可能であるから,原告の主張にはいずれの点でも理由がないというべきである。とりわけ,本件においては,前記で指摘した諸事情, 特に,本件売買契約の交渉開始時(契約締結前)において,Aが米国に居住し,本件各不動産の登記事項証明書上の住所も米国とされていたこと,本件売買契約 締結の直前の一時帰国した際にその住民登録上の住所が本件各不動産の所在地の一部である本件登録地に定められたことからすれば,原告(担当者)において, 本件売買契約の代金決済(本件各不動産の引渡し)当時のAの住所が国内にあるか否かについて強い関心を払い,予めその調査確認等を行うべきであったといわ ざるを得ず,その当時,Aが実際に本件登録地に居住し,又はこれを生活の本拠(住所)とする予定でなかったことを認識していたと推認することもできるか ら,原告の主張はその前提を欠いており,失当であるといわざるを得ない。 以上のとおり,Aが非居住者に該当するとして本件納税告知処分に係る所得税をAから源泉徴収して法定納期限までに納付しなかったことについて,真に原告の 責めに帰することのできない客観的な事情があったということはできないし,納税者に不納付加算税を賦課することが不当又は酷になる場合ということはできな いから,通則法67条1項ただし書の「正当な理由があると認められる」場合には該当しない。

源泉徴収義務は代金支払者にあるので、不動産取引において最低限確認すべき内容の本人の署名押印が担保されることや,印鑑証明が受領できることと いったこと以外に、国外に住所がある場合には非居住者に該当するか否かの確認に注意を払う必要があることを物語っています。


非居住者とは

我が国の所得税法では、「居住者」とは、国内に「住所」を有し、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人 を「非居住者」と規定しています。  「住所」は、「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって判定する」ことになります。  したがって、「住所」は、その人の生活の中心がどこかで判定されます。  ある人の滞在地が2か国以上にわたる場合に、その住所がどこにあるかを判定するためには、職務内容や契約等を基に「住所の推定」を行うことになります。  「居所」は、「その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所」とされています。


源泉徴収義務とは

非居住者又に対して、日本国内で源泉徴収の対象となる国内源泉所得の支払をする者は、その支払の際、原則として、所得税を源泉徴収しなければなりま せん。

不動産の譲渡の場合には、その譲渡対価の10%  (ただし、土地等の譲渡対価が1億円以下で、その土地等を自己又はその親族の居住の用に供するために譲り受けた個人から支払われるものについては、源泉徴収は不要です。)

判決文に関しては、最高裁判所ホームページにありますので、ご覧ください。

 

 

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