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葬式費用は誰が負担するのか

葬式費用は葬儀を主宰する者が負担することになります。通常は相続人や関係者の間で葬式費用の負担について合意があるのが 普通ですが、このような合意がない場合には自己の責任において追悼儀式を準備し、手配等をして挙行した者が主宰した者となり葬式費用を負担することになり ます。

葬式費用の裁判例

平成24年3月29日の名古屋高裁での判決で「葬儀に要する費用については同葬儀を主宰した者が負担し、その内埋葬等の行為に要する費用は祭祀主宰 者が負担するものとされました」この事案の概要は下記の通りです。

親族関係

亡E 被相続人

亡F 亡Eの妻で20年以上前に別居し、既に死亡している。

A 亡Eの長男で相続人

C 亡Eの二男で相続人

B 亡Eの兄弟

事案の概要

Bが亡Eのために葬儀を主宰し葬儀費用を支払った。その支払った葬儀費用を相続人のA及びCが亡Eから相続した相続財産から返還することを求めた裁判です。

高裁の判断

亡Eは予め自らの葬儀に関する契約を締結するなどしておらず、かつ、亡Eの相続人であるA、Cらや関係者である者らの間で、葬儀費用の負担について の合意がない状況において、Bが自己の責任において亡Eの追悼儀式を手配し、その規模を決め、喪主も努めたのであるから、Bが亡Eの追悼儀式の主宰者であったと認められ、 Bが亡Eの追悼儀式の費用を負担すべきものというべきである。また、埋葬等の行為に要する費用については亡くなった者の祭祀承継者が負担するものとするの が相当である。祭祀を主宰すべきものは慣習等に従って定められるべきものであるが、本件の証拠を持ってしては、亡Eの祭祀を主宰すべき者を誰にすべきかに 関する慣習は明らかでなく、家庭裁判所で、亡Eの祭祀承継者が定められない限り、亡Eの遺骸等の埋葬等の行為に要する費用を負担すべき者が定まらないとい わざるを得ない。

したがって、BがA,Cに対し、葬儀費用を請求する法的根拠はないと言うべきである。

相続財産から控除できる葬式費用

葬式費用は相続債務ではないが、相続税を計算するときは遺産総額から差し引くことができます。

葬式費用となるもの

遺産総額から差し引く葬式費用は、通常次のようなものです。

  1. 死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用
  2. 遺体や遺骨の回送にかかった費用
  3. 葬式や葬送などを行うときやそれ以前に火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用が 認めれれます。)
  4. 葬式などの前後に生じた出費で通常葬式などにかかせない費用(例えば、お通夜などにかかった費用がこれにあたります。)
  5. 葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
葬式費用に含まれないもの

次のような費用は、遺産総額から差し引く葬式費用には該当しません。

  1. 香典返しのためにかかった費用
  2. 墓石や墓地の買い入れにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
  3. 初七日や法事にかかった費用

香典は誰のもの

香典は葬儀の主宰者(喪主)になされた贈与の性質を有する金員であって遺産には属さないとされています。また、香典が社交上の必要によるもので贈与 者と受贈者との関係等に照らして社会通念上相当と認められるものについては、贈与税を課税しないことにされていますので非課税となります。 香典は被相続人の葬儀に関連する出費に充当することを意図したものであるので、通常は葬式費用や香典返しに充当されることになります。香典が葬式費用や香典返しに充当しても余った場合は相続財産に含める必要はありません。


上記裁判例の判決文〔名古屋高裁判決文〔平成23(ネ)968〕は最高裁判所ホームページの裁判例情報に 掲載されていますのご覧ください。


 

 

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