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MS法人の費用負担に関する判決(東京地裁平成24年1月31日判決)

眼科医などの医療法人ではコンタクトレンズなどの販売を別会社を設立して行っている場合がありますが、眼科診療所の経営を目的とする医療 法人である原告が、眼鏡及びコンタクトレンズの販売を目的とする関連法人が行った広告宣伝費の一部を負担した上、その全額を損金の額に算入するととも に、その一部負担を消費税の課税仕入れであるとして課税期間の消費税及び地方消費税の確定申告したところ、処分行政庁から寄附金に該当するとし、法人税及 び消費税の更正決定受けたため、その取消を求めた裁判がありました。

東京地裁では、広告宣伝費用の一部の負担は利益調整のためなされたものであるとし、法 人税法の寄附金に当たるとされました。また、広告宣伝費用の一部負担は原告からMS法人に贈与又は無償で供与された金銭又は経済的な利益であると認める ことができるので、原告による広告宣伝費の負担は、対価性のない取引であるから、消費税法の課税仕入れに該当せず、仕入税額控除の対象にならないとされま した。

以上のことから原告の請求は棄却されました。


事案の概要

眼科診療所の経営を目的とする医療 法人である原告が、眼鏡及びコンタクトレンズの販売を目的とする関連法人が行った広告宣伝の費用の一部を負担した上その全額を損金の額に算入するととも に、その一部負担を消費税の課税仕入れであるとして課税期間の消費税及び地方消費税の確定申告をしたところ、処分行政庁から、関連法人の広告宣伝費の一部 負担は同一のグループに属する法人の間の利益調整のために原告から上記関連法人に対し対価なくして譲渡又は供与されたものであって、法人税法の寄附金に該 当し、原告の各事業年度の所得の金額の計算上、損金算入限度額を超えて損金の額に算入することができないとして、上記各事業年度の法人税の更正及び重加算 税賦課決定又は過少申告加算税賦課決定を受け、また、関連法人の広告宣伝費の一部負担は対価なくしてされたものであって、消費税法の課税仕入れに該当せ ず、仕入税額控除の対象にならないとして、上記各課税期間の消費税及び地方消費税の更正及び重加算税賦課決定を受けたことから、上記関連法人の広告宣伝費 の一部負担は、上記関連法人との共同事業について行われた共同広告の費用として支出されたものであって、法人税法の寄附金に該当せず、また、消費税法の課 税仕入れに該当すると主張して、処分行政庁の所属する被告に対し、上記各事業年度の法人税の更正及び重加算税賦課決定又は過少申告加算税賦課決定並びに上 記各課税期間の消費税及び地方消費税の更正及び重加算税賦課決定の取消しを求める事案です。

本事案の争点

(争点1)

 法人税法の寄附金該当性、具体的には、本件広告宣伝費は同条の寄附金に該当し、原告の各事業年度の所得の金額の計算上、損金算入限度額 を超えて損金の額に算入することができないか否か。

(争点2)

消費税法の課税仕入れ該当性、具体的には、本件広告宣伝費の負担は課税仕入れに該当せず、仕入税額控除の対象にならないか否か。


被告課税庁の主張

本件広告宣伝費は、グループに属する法人の間の利益調整のために原告からMS法人に対し対価なくして譲渡又は供与されたものであって、通常の経済取 引として是認することができる合理的理由が存在しないから、法人税法の寄附金に該当し、原告の各事業年度の所得の金額の計算上、損金算入限度額を超えて損 金の額に算入することができない。

また、広告宣伝費用の一部負担は原告からMS法人に贈与又は無償で供与された金銭又は経済的な利益であると認める ことができるので、原告による広告宣伝費の負担は、対価性のない取引であるから、消費税法の課税仕入れに該当せず,仕入税額控除の対象にならない。


原告の主張

関連法人の広告宣伝費の一部負担は,上記関連法人との共同事業について行われた共同広告の費用として支出されたものであって、法人税法の寄附金に該 当せず、また、消費税法の課税仕入れに該当する。


裁判所の判断

広告宣伝は、客観的にみて、その受け手である不特定多数の者に対し原告の事業活動の存在又は原告が提供する医療サービスの優越性を訴える宣伝的効果 を意図して行われたものであると認められることを要するということになるが、MS法人の広告には原告の名称、その眼科診療所の名称、所在地、電話番号等の 記載は、その表題部、紙面、辺縁部を問わず、一切存在しないことによれば客観的にみて、原告の広告宣伝としての性質を有しておらず、原告とMS法人との共 同事業について行われた共同広告であるということはできないというべきである。

原告は、MS法人が広告宣伝を行う都度発生するはずの本件広告宣伝費に関する記帳を期末ないし事業年度の終了後に恣意的な金額調整等を行った上で一 括して行うなど、本件広告宣伝費の負担が期末においてグループに属する法人の間の利益調整を行ったものであると考えなければ説明がつかない不自然な会計処 理をしていたこと、さらに原告代表者及び課長代理は、原告による業務サポート料の受取りはグループに属する法人の間の利益調整のためのものである旨の説明 をしていたことをも併せて考慮すると、本件広告宣伝費は、MS法人との共同事業について行われた共同広告の費用として支出されたものではなく、各事業年度 の末において、グループに属する法人である原告及びMS法人の損益の状況を見ながら、その間の利益調整のために原告からMS法人に対し対価なくして譲渡又 は供与されたものであって,原告からMS法人に贈与又は無償で供与された金銭又は経済的な利益であると認めることができ,通常の経済取引として是認するこ とができる合理的理由が存在しないから,本件広告宣伝費は法人税法の寄附金に該当する。

また、本件広告宣伝費は,各事業年度の末において、グループに属する法人である原告及びMS法人の損益の状況を見ながら、その間の利益調整のために 原告からMS法人に対し対価なくして譲渡又は供与されたものであって、原告からMS法人に贈与又は無償で供与された金銭又は経済的な利益であると認めるこ とができることは、本件広告宣伝費が販売促進費(販売手数料)の趣旨で支出されたものであると認めることはできない。原告による広告宣伝費の負担は、対価性のない取引であるから、消費税法の課税仕入れに該当せず,仕入税額控除の対象にならない。


 



上記裁判事例の詳細については最高裁判所ホームページをご覧下さい。


 

 

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