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医療法人化をお考えの先生へ
開業されて軌道に乗ってきますと、次のステップとして、個人開業のまま続けたほうがよいのか、法人化したほうがよいのかをお考えになると思います。
そこで個人開業と医療法人との違いを税制面で考えてみたいと思います。
※医療法人の特徴についてはこちらをご覧ください。
個人開業医と医療法人の税制上の違い
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課 税 |
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その事業年度の所得に対する所得税の 課税で、税率は所得の増加に応じて課税する超過累進税率が適用 |
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その事業年度の所得に対する法人税の課税で、税率は比例税率 |
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業務の範囲 |
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診療所・病院 |
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診療所・病院のほか介護老人保健施設や附帯業務が可能 |
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決算の届け出 |
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都道府県知事への届け出は不要 |
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都道府県知事への届け出は必要 |
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親族に対する給与 |
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青色申告書を提出する事業者の一定の 親族で、その事業に専ら従事する親族にのみ青色事業専従者給与が認められる |
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法人の事業に専ら従事している親族のほか、その事業に専ら従事していな親族であっても、理事に就任し経営に参画していれば役員報酬が、参画の度合いに応じた相当額なら支給可能 |
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退職金 |
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院長に退職金を支給しても必要経費にはならない |
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院長に対する退職金は適正であれば必要経費とすることができる |
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生命保険の保険料 |
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生命保険料は所得控除の生命保険料と個人年金と合わせて十万円を上限として所得控除される |
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医療法人を契約者及び受取人とした定期保険(掛け捨て)の保険料支払額で一定のものについては、必要経費となる |
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欠損金の繰越 |
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青色申告者の事業所得の赤字は3年間繰越控除ができる |
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所得が赤字になった場合は青色申告書を提出している事業年度に限り、7年間の繰越控除ができる |
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交際費 |
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支出が業務遂行上必要であれば必要経費とすることができ、上限はない。ただし、業務上の必要性の範囲は狭い |
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業務上の必要性の範囲は広いが、資本金額により算入できる金額には限度がある |
(※詳細についてはこちらをご覧ください) |
税金総額の比較
個人の場合の院長(事業所得)と専従者の所得税、住民税の合計額と医療法人の場合の院長(給与所得)と親族の所得税、住民税及び医療法人の法人税、住民税,事業税の合計額とを比較検討することにより、メリットがあるかないかの判断が必要です。
事業の多角化
医療法人は、平成19年4月より、新設の法人は、持分の定めのない基金拠出型医療法人となりますが、旧医療法の持分の定めがある医療法人のように解散時に残余財産を持分に応じて受け取ることができなくなりましたが、有料老人ホームや高齢者専用賃貸住宅の設置を行うなどの多角化が可能となりました。残余財産の問題についても退職金と生命保険の活用によりクリアすることが可能です。
長期的な視野での対策が必要ですので、ご相談下さい。
法人化支援(医療法人設立)
1.個人事業から医療法人へ
個人事業として始めた診療所も税負担、規模の拡大(分院や老人保健施設など)や将来の事業承継のことなどで、医療法人化を考える先生が増えてきています。そこで、医療法人とはどのようなものか。また、そのメリットやデメリットについて考えてみましょう。
2.医療法人とは
医療法人とは、医療法の規定に基づき、病院、医師もしくは歯科医師が常時勤務する診療所または老人保健施設を開設しようとする社団又は財団のことをいいます。
1.医療法人の分類
(旧医療法) | (新医療法) | ||||||
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(新医療法による分類)
- 社会医療法人
- 根拠法:医療法(医療法一部改正により創設[平成19年4月施行])
- 認可・承認:都道府県知事の認可
- 要件:医療法人のうち
- 財団又は持分の定めのない社団
- 役員の同族割合1/3以下
- 社団法人の場合、社員の同族割合1/3以下
- 財団法人の場合、評議員の同族割合1/3以下
- 他の公益法人等の役員・使用人である役員が1/3以下
- 救急医療等確保事業(救急医療・災害時における医療・へき地の医療・周産期医療・小児医療・その他都道府県知事が特に必要と認めるもの)を行っていること。
- 上記業務の@施設の構造A体制B実績が厚生労働大臣の定める基準に適合していること。
- 残余財産の帰属先は国、地方公共団体、他の社会医療法人
- 理事6人以上、監事2人以上
- 役員の給与・報酬は不当に高額でないこと
- 当該医療法人関係者(役員・社員・使用人等)に特別の利益を与えないこと
- 営利目的法人へ寄附等、特別の利益を与えないこと
- 支配目的の株式等財産の保有をしていないこと
- 自費患者への請求額が社会保険診療と同一の基準による
- 社会保険診療等に係る収入金額が全収入の80%超である
- 医療診療収入(社会保険診療、自費診療等を含む)が医療直接経費の150%以下である
- 法人税率:法人税法上の収益事業のみ22%(医療法上の附帯業務・収益業務・本来業務に附随する収益業務)
- 収益業務の可否:収益業務が可能。また附帯業務として社会福祉業務も実施可能
- 基金拠出型医療法人
- 根拠法:医療法(第5次[平成19年4月施行]医療法一部改正により創設)
- 認可・承認:都道府県知事の認可
- 要件:医療法人のうち
- 財団又は持分の定めのない社団
- 役員数:理事3人、監事1人以上
- 理事長:原則医師又は歯科医師
- 定款の定めにより拠出基金の返還義務を負う
- 基金の返還は、定時社員総会の決議による
- 返還は拠出額が限度で、純資産額が基金及び資本剰余金の価額等を控除した金額を上限とする
- 基金の返還には利息を付すことができない
- 法人税率:30%
- 収益業務の可否:収益業務は行えない。附帯業務としての社会福祉業務は実施可能
- 経過措置型医療法人(旧医療法人)
- 根拠法:医療法
- 認可・承認:都道府県知事の認可
- 要件
- 財団又は持ち分の定めのある社団
- 役員数:理事3人、監事1人以上
- 理事長:原則医師又は歯科医師
- 法人税率:30%
- 収益業務の可否:収益業務は行えない
- 特定医療法人
- 根拠法:租税特別措置法
- 認可・承認:国税庁長官の承認
- 要件:医療法人のうち下記要件を満たすもの
- 財団又は持ち分の定めのない社団
- 医療診療収入は、医師、看護師等の給与、医療提供に要する費用等患者のために直接必要な経費の額に100分の150を乗じた額の範囲内であること
- 自費患者は社会保険診療と同一の基準により計算
- 社会保険診療にかかわる収入金額が全収入の80%超である
- 40床以上もしくは救急告示病院もしくは救急診療所である旨を告示された診療所であって15床以上を有すること
- 差額ベット比率30%以下
- 役員の同族割合1/3以下
- 給与支給額は年間3,600万円以下 等
- 法人税率:22%
- 収益業務の可否:収益業務は行えない
- 特別医療法人(第3次[平成10年施行]医療法改正により創設)
- 根拠法:医療法
- 認可・承認:都道府県知事による定款変更の認可
- 要件:医療法人のうち
- 財団又は持ち分の定めのない社団
- 自費患者は社会保険診療と同一の基準により計算
- 社会保険診療にかかわる収入金額が全収入の80%超である
- 特例許可の対象となる病床を有すること
- 役員の同族割合1/3以下
- 役員の給与支給額は年間3,600万円以下
- 残余財産の帰属先は国、地方公共団体、他の特別医療法人等
- 法人税率:30%
- 収益業務の可否:収益業務が可能
3.医療法人制度の変更(平成19年4月1日以降)
平成19年4月に施行された第5次医療法改正によって非営利性の徹底のため医療法人制度が大きく変わり、社会医療法人制度が創設されま した。残余財産の帰属先に国、地方公共団体、他の社会医療法人とされ、新たな医療法人の設立は財団である医療法人又は持分の定めのない社団医療法人に限られます。また、基金制度の利用による、拠出額の返還を定款に定めた「基金拠出型医療法人」が、今後、認定される医療法人となります。既存の「持分あり」の医療法人及び出資額限度法人は、経過措置が適用され、“当分の間”存続が認められています。なお、定款を変更し持ち分なしの医療法人になった場合は、持分ありの医療法人には戻れなくなりますので注意が必要です。また、合併の際に合併前の医療法人のいずれもが持分の定めがある医療法人である場合には、合併後も持分の定めのある経過措置型医療法人とすることができます。
4.社会医療法人
社会医療法人は、平成19年4月1日施行の改正医療法により、救急医療やへき地医療、周産期医療など特に地域で必要な医療の提供を担う医療法人として創設されたもので、これにより、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図ることを目的としています。
メリット
- 法人税率は22%の税率が適用される
- 医療保険業(付帯業務及び収益業務を除く)に対する法人税は非課税
- 収益業務をおこなえる
- 社会医療法人債の発行による資金調達が可能
- 救急医療等確保事業の用に供する病院及び診療所に係る固定資産税、都市計画税、不動産取得税が非課税
デメリット
- 認定取り消しの場合、原則として、簿価純資産額から利益積立金額を控除した金額を益金の額に算入
- 同族支配や特別の利益供与禁止
- 解散時の残余財産の帰属先は、国、地方公共団体及び他の社会医療法人に限られる
5.基金拠出型医療法人
基金拠出型医療法人は、平成19年4月1日施行の改正医療法により、社団医療法人で、定款の定めにより基金の拠出額の返還義務を負う医療法人です。基金とは、社団医療法人に拠出された金銭その他の財産であって、当該医療法人が拠出者に対して、定款の定めるところに従い返還義務を負うものです。剰余金の分配を目的としないという医療法人の基本的性格を維持しつつ、その活動の原資となる資金を調達し、その財産的基礎の維持を図る制度です。
メリット
- 基金の拠出者は個人・法人を問わないため広く募集できる
- 基金の拠出額及び使途に制限はない
- 基金には利息を付ける必要がない
- 基金の返還は、純資産額が基金等の総額を超える部分に限られ、返還が無理なく行える
デメリット
- 基金には利息がつかないなど利益を享受できないことから、第三者からの基金拠出は期待できない
- 基金は、法人解散時や破綻時には返済が後回しになる劣後債権なので返還されない場合もある
6.特別医療法人
特別医療法人は、平成19年4月1日施行の改正医療法により、平成19年4月1日以降は新たに特別医療法人となることはできず、また、医療法の附則第8条により施行日より5年(平成24年3月31日)までの間に社会医療法人への認定申請をして認定を受ける必要があります。
メリット
- 特定医療法人と同様に持分の放棄による経営の永続性
- 収益業務が行える
デメリット
- 持分の放棄により退社時や解散時に持分の払い戻しが受けられない
- 役員報酬や同族役員の制限
- 法人税の課税は他の医療法人と同じ30%である
7.特定医療法人
特定医療法人は、租税特別措置法による医療法人です。
メリット
- 持分の放棄による経営の永続性
- 法人税課税が軽減税率22%
- 移行時の課税は非課税
デメリット
- 持分の放棄により退社時や解散時に持分の払い戻しが受けられない
- 役員報酬や同族役員の制限
- 差額ベットの比率の制限
- 収益業務は行えない
8.医療法人化のメリットとデメリット
メリット
- 院長や従事している家族に給与を支払い、所得を分散することにより税金の負担を少なくできる。
- 院長等に退職金を支給できる。
- 定期保険(掛け捨て)の保険料が、損金に計上できる。
- クリニックの収支と個人の家計を明確に区分できる。
- 分院や介護事業所等複数の事業所を経営できる。
- 理事長に万が一のことがあっても法人は継続するので、新たに理事長を選出するだけでクリニックを継続できる 。
- 金融機関をはじめ対外的な信用が向上し、経営が楽になる。
- 社会保険診療報酬にかかる源泉所得税の徴収がありません。
- 従業員の帰属意識が強くなり、組織が活性化する。
- 旅費規定を作成して、役員に非課税の日当を支給できる。
デメリット
- 法人に利益が出ても、法人の現預金を理事長が自由に使うことはできない。
配当もできない 。 - 社会保険への強制加入。
- 決算期ごとに「資産の総額の変更」の登記及び官庁への届出が必要である。
- 事業運営上、個人経営と比べ規制や制約が増える。
9.法人化のポイント
法人化するかどうかの判断に節税効果を考えるならば、社会保険診療報酬が5,000万円を超えて概算経費率が使えなくなったときや年間所得が1,500万円に達したときなどに、法人化した場合の税額と比較検討してみるとよいでしょう。その際には、社会保険への強制加入による事業主負担分の増加要素も考慮する必要があります。
今後、設立が認められる医療法人は前述した「持分の定めのない医療法人」しか許されません。持分がないため解散時等に残余財産に対する持分の返還を受けられなくなりましたので節税効果だけでの医療法人化は魅力がなくなってきているように思われますが、分院や介護老人保健施設等の運営などの多角化が可能なことなどメリットもあります。また。役員退職金や生命保険を上手に活用し長期の予測を立てることで、残余財産の持分の返還問題も解決できます。
医療法人化をお考えの先生は、当事務所にぜひご相談ください。
